さようなら!栄光のダイブツ先生 Part2】チャラ男の娘日記 第50日 女装子完成

f503e044b21e39f31d4a864826738769_s

俺はダイブツが用意してくれたデカイ紙袋に、自分の服を詰めた。
ケータイ見たけど、着信はなかった。クソー、ジョージの野郎め!

「ほらこれも入れるんだよ」
ダイブツが俺のシューズを袋の上に乗っけてきた。

「その格好でスニーカー履くわけにはいかないだろ。ほらこっちだよ」

追い立てられるようにドアの前まで来ると、レディースのサンダルがあった。

「ヒールのほうが似合うけど、きっとうまく歩けないから」

サイズはギリギリで、かかとのバンドを踏むことでなんとか履けた。

ダイブツは俺の顔を両手で挟んで、商品の最終チェックといった感じで見つめた。

「よし大丈夫だ」

と、大きく頷いた。

「人生はねリレーなんだ。みんな誰かから見えないバトンを受け取って走ってるんだ。気づいてようが気づいてまいがね。今日あたしはあんたにバトンを渡した」

「バトン?」

「そうだ。でもあんたはバカみたいだからちゃんと見えるやつもあげとこうね。これ持って行きな」

それは小さなノートだった。

「これにあたしのノウハウが入ってる。さすがに全部やるほどお人好しじゃないけどね。初心者には十分すぎるほどだよ」

「どうして」

「洗面台にあったアメニティーを入れた袋、あれあんたのだろ」

「え!?」

「化粧が進むにつれてあんたが喜びに震える様子見て気づいたんだ。この子は元々やりたくてしょーがない子だったんだってね」

恥ずかしくて目をそらしちゃった。

「あんなの持って行く必要ない。あんたは正々堂々その格好で化粧品を買いに行きなさい」

なんだよ、この感動的なシチュエーション。テレビのバラエティーだったらここ泣くとこなんだよな。いや、泣かねーし。

あ、涙出てきちゃった。

「あの、、、」

「ん?」

「ありがとうございます」

「これからさ、これやっていくにつれて、あんたもっと可愛くなる。でもねきっと何かを背負込む。それを心地よく感じるのか、あるいは重く感じるのか。その時よーく考えることだね。よーくね」

ダイブツが先にドアを開け、廊下を確認する。

「よし行きな。もしあの子らとすれ違っても決して目を合わせんじゃないよ。下を見てもいけない。ただ前を向いて。さあ行きな」

廊下に出るとすぐにドアは閉まった。

「ありがとうね」と聞こえた気がした。

そして人気が一切なくなった。

淡い照明に照らされた廊下の先にエレベーターがある。
あれに乗って脱出だ。

体のあらゆるところに違和感を感じるけど、サンダルのおかげで早く歩ける。

エレベーターの手前まで来たところで、扉が開いた。

HIPHOP風の服にキャップ、サングラスのガングロの巨漢の男が出てくる。

やっぱり想像通りの見た目の極悪人。そうだこいつこそ俺が頭の中で想像して怯えていたHEYメーンに違いない!あまりにドンピシャで自分の想像力にビビる。

そしてもう一人は、ショートカットの男、、

こいつ、

ブー子じゃん!!

すっぴんだけど間違いない!ブー子だ。
男みたいな顔つきしてるけど、白いTシャツが胸で盛り上がっている。

二度見はできない。
俺はダイブツに言われた通り視線を前に固定したまま、エレベーターに乗り込んだ。
震える指で一階を押す。

扉が閉まる瞬間、

ブー子がこちらを振り返った。

それは表情がわからないのっぺらぼうみたいだった。

エレベーターが一階につき、俺はそのまま出口へと向かった。
フロントを見ると誰もいない。

自動扉が開く。

ねっとりした熱気が顔を包み、これまでよりも露わになった部分に新鮮な感触を呼び込んだ。

(その頃)

部屋にはダイブツとブー子とカマタリ(HEYメーン)がいた。

「あいつ、どこに行った?」
ブー子が目をひん剥いて食ってかかる。

「コロちゃん、もうやめなさい!人に迷惑かけることはやめなさい!」

ダイブツの言葉にブー子は下卑た笑みを浮かべた。

「迷惑かけることはやめなさい?何言ってんだよ!おめーはどうなんだよ!人に迷惑かけてねーてのかよ!そんな格好してよー、人様不愉快にしてんじゃないのかよ!気持ち悪いんだよおまえ!」

「そんな子じゃなかったはずだよ。とても優しい花のような子だったじゃないか。あたしはお前が宝物だったんだ。だから美しく、、、」

「だからって、いろいろメイクや服を着せましたって?母親だったらそりゃ普通だ。だけどさおめーは父親じゃねーか。オカマの父親にさそんなことされて嬉しいと思うかよ!思わないね!地獄だよ!おめーのおかげであたしは女ってのがイヤになったんだよ!意地でも女にはならねーって決めたんだよ」

ダイブツはため息をつくとテレビのスイッチを入れた。

オリンピックの閉会セレモニーがニュースで流れている。

「いいかあたしが女の格好してクラブに行くのは、おめーへの復讐だ。おめー仕込みの綺麗なメイクして男を酔ったふりして、ひっかけてホテルに連れ込んで、金をふんだくるんだ」

テレビの中では日本のパフォーマンスが繰り広げられている。

「おかげで金はだいぶ貯まった。なあその金で何するかわかるか?」

カマタリがピューイッと口笛を吹いた。

「全部取るんだよ!!子宮も胸も全部な!!」

ブー子の狂ったような笑い声が響いた。

ダイブツは「ああ、神様、、」
とつぶやいた。

そしてブー子の方へと歩み寄ろうとした。

ブー子がカマタリに目配せをした次の瞬間

「あぐ」

ダイブツの腹にナイフが刺さっていた。

「コロちゃん、、、」

「バーカ!!こっち来るからだよ!」

ダイブツがカーディガンをまさぐり、ライターを右手にかかげた。

それはまるで聖火のようだった。

「コロちゃん、行くよー!」

チャラ男がホテルを出て10歩ほど歩いたところで、後ろで凄まじい爆音が響いた。
熱風がチャラ男の全身を走りぬける。

振り返るとホテルから炎と煙が絡みあいながらメラメラもうもうと上がっていた。

20dd919216c4e36152b68c011bc0bb00_s

続きは第51回 チャラ男の娘日記 で。(2016年8月25日配信)

→ 【チャラ男の娘日記】目次はこちらから

人気ブログランキングに参加中です。 お楽しみいただけましたら、応援クリックよろしくお願いいたします。

コメントを残す

*
サブコンテンツ

このページの先頭へ

有名人ダイエット