男の娘よ 大志を抱け】チャラ男の娘日記 第51日
男の娘の俺は、ホテルから産み出されたかのように外へと足を踏み出した。
長い一日だった。
けど、その長い一日の中の
わずか数時間で
俺の人生は変わったのだ。
いや、マジで
一分、一秒でだって
人生は変わるんだ。
ホテルを振り返らずにそのまま前を向いて歩いて行こうとした瞬間
爆発音が響き、足元を揺らした。
「うおっ!!」
頭を抱えて身をかがめる。
何!?
振り返った。
ホテルから炎と煙が吹き出していた。
窓ガラスが派手な音を立てて割れて飛び散り、炎と黒煙が勢いを増して吹き出した。
再び何かが割れる音が小さく聞こえた。
下から目で追っていくとそれは俺がさっきまでいた十階だった。
夏の夜の暑さを凌駕する熱風が煙の匂いを乗せて吹いてきた。
それは全身を通り抜け、頬を一瞬強く包み込んだ気がした。
ダイブツの手、熱かったな。
思わず落としてしまった紙袋を抱え上げ、強く抱きしめた。
歩き出さなきゃ。
前から男が走ってきた。
「うわー、燃えてるよ!え、火事すか?」
俺はシカトして道玄坂を目指す。
「どこ行くの?ねえ!うわー火事だよ!」
野次馬達が祭りを見に行くようなはしゃぎっぷりで俺をすり抜け、ホテルの方へ走っていく。
先ほどの男がまた来た。
「ねー飲み行こーよ」
EXILE風のその男は気がついていない。
俺がさきほどケータイで救いを求めきた友人であることに。
ホテルまで来てくれたことは素晴らしいが、友人をほったらかしにしてナンパはいただけないな。
ジョージくん。
「いいよ」
「え、マジで!?行こ行こ!」
「一人?」
「うん一人一人!お一人様だって。うわーマジで可愛いね」
この薄情なお調子者をどうやって懲らしめてやろーか。
そんなことを考えながら、
俺は
いや
わたしは
夜の街へと向かったのでした。
そこには未知と無限の可能性が広がっている。
「紙袋デカくね?ひょっとして家出?」
「ちがいます」
世界を変えることは大変だ。
だけど
自分の中の世界はいくらでも変えられる。
その自由は拾い上げられることを、いまかいまかと待っている。
男の娘たちよ。
大志を抱け!
チャラ男日記 第一部 完
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