第17話「こんな会社辞めてやる!そして運命の歯車が動き出す!」 色情スパイラル ~とある父と娘の日記~ 9月14日

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9月14日(水)「こんな会社辞めてやる!そして運命の歯車が動き出す!」

【父 日記】

5時閉店のサイゼイリアから追い出され、帰宅すると妻はすでに部屋の中。
まったく気配はなかったが、きっと部屋で息を潜めて私の立てる物音に聞き耳を立てていたはずだ。
そして自分のことを棚に上げ、朝帰りの夫を心の中で汚く罵っていたにちがいない。

サイゼリアで見かけたカップルをネタに自慰をして眠りにつく。

が、電車内での妻の能面を思い出して部屋のドアに鍵をかける。

昼、起きる。
誰もおらず。

あの女は今日も百人町か。

そういえば娘の顔だいぶ見ていない。

会社を休んで(いや無断欠勤なのであるが)
もう3日目である。

業務端末の電源を入れると着歴、留守番電話、メールが
恐ろしい数。

一つ一つ確認。心配しているようなメッセージも、もはやこちらの恐怖心を煽る以外の
なにものでもない。改めて自分のしでかしたことの大きさを感じ震え、もはや後には引き返すことはできないと確信。
仮に戻ったところで、降格、左遷は避けられまい。そして後ろ指をさされながら背中をまるめて生きていくのである。

テレビをつけ「ゴゴスマ?」、「直撃LIVEグッディ!」などを見る。豊洲市場の盛り土問題。これに比べれば、私のしでかしたことなど些事である。急に元気が出る。

風呂に入り、いい湯だなとドリフターズを歌う。

あのメール。渋谷に行くべきか。
誰が送ってきたのか。

風呂から上がると例の知らないアドレスからメール。
書かれているのは

「ここ。夜。」

添付されているファイルを開くと

ビニールシートで一部覆われた建物の写真。
看板を見てすぐに気がつく。

爆発事件の起きた渋谷のラブホテルだ。

ここに来いというのか。

警察に連絡すべきか?
だが、これまでのメールはどれも脅迫的要素はないしたただのイタズラとして片付けられてしまうだろう。それに私の女装写真が露見する形となってしまう。

選択肢は

このまま無視するか。

渋谷のラブホテルに行くか。

(追記)

決めた。行くことにした。

先ほど会社に電話して、また絶叫して電話を切った。

家の電話が鳴り、出たら娘の学校からだった。
具合はどうですかだと。

娘よ、お前も私といっしょか。

大丈夫ですよと言って電話きる。

準備をしよう。

この日記がまた書けることを祈りながら。

【娘 日記】

渋谷のスタバで交差点を見ている。

信号変わる。
よーいスタート。
みんなお魚みたいに

渡っていく。渡っていく。

信号変わる。
とまれー。

かわいい。みんな止まってる。

お魚ちゃん、みんなどこに行くの?

あの中にY美いないかな?

二人とかグループはみんな笑顔。

一人はみんな悲しげな顔。

みんなどこ行くの?

昨日の写真のことを思い出す。
いま見ようと思ったらすぐに見れるけど。

見るのこわい。

親父。

私は男の娘に興味をもったけど。

でも自分の父親がオカマになることは望んでいない。

人生、運命の波まったく読めない。

海の決められた波に乗って生きている魚がうらやましい。

みんな、人生の波にのっている?

荒波?

穏やかな波?

時間までここにいよう。

私と気が合いそう人

私とセックスしたら気持ちよさそうな人

私の人生を変えてくれそうな人

いろいろ想像しながら探すんだ。

運命の人。

あ、いたいた。
あの派手な子。いいね。

フラペチーノ足りないかも。

(追記)
キャラメルマキアート買いに下行ったら、あの派手な子が並んでたんだ。

マジか。

私よりちょっと背が高いけど。

いま、離れたとこに座った。

すごく派手な格好。髪の毛巻いてるしキャバ嬢みたい。
ストロー咥える感じとかセクシー。

カバンの中から手帳みたいの取り出した。

いや、手帳にしては大きい。

ノート?

それを見ながらメイクを直ししてるの。

何が書かれているの?

あの子のノートを見たい。

 

明日の日記へ続く。

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